小さな街と駄菓子屋のこと
私は高校生までは地方に住んでいた。そしてそこで育った。
不便ではないけど、便利でもない小さな街だった。路線バスは走っているが、バス停まで行くのに三十分弱かかる。そしてその路線バスは、一時間に一本か二本ぐらいしか走っていなかった。
そんなところだったので、車を持つことが当たり前。洗濯機や冷蔵庫のように、住んでいくうえで車は必需品だ。
車の免許が持てない(十八歳未満)子どもたちは、自転車を乗り回していた。
このような街では、お店も大してない。私はよく街の本屋さんで友だちと過ごすことが多かった。なにか買うわけでもなく、時間がくるまで立ち読みしていた(こんなことが許されていたのもすごい)。
子どもだったということもあって、買い物は身近ではなかった。なのでお店でなにか買うという行為が、多少なりともストレスだったし、恥ずかしい気持ちになることが多かった。
お金をちゃんと出せるだろうかとそわそわしたり、店員さんになにか言われないかとか。いま思えば余計なことを考えていたように思える。
小学校の近くに(というか隣に)駄菓子屋さんのような、小さなお店があった。そこには駄菓子から文房具、アイドルのプロマイドなど小学生が喜ぶようなものを揃えて置いてあった。
小学生のころ私もたまに行って、なにかを買ったことがあるような気がする。というのも、母から「そこのお店ではあまり買わないほうがいい」と忠告されたことがあったのだ。
どうして母がそんなことを言ったのかはわからないけど、子どもながらに「きっといいお店じゃないんだ」と思っていた。
だから友だちとお店に入って物色することはあっても、買うことはほとんどなかった。
そんなある日、いつも通り友だちとお店の中を見てまわって、なにも買わずにお店の外にでると、お店の人が追いかけてきた。なんだろと思って振り返ると「ちゃんとお金払わないとだめだよ」と少し怒った風に言ってきた。
私たちは言っていることが分からないという顔をしてると、お店の人が私たちのポッケの中とかを確認しはじめる。
当たり前だけど、なにもなかった。だって盗んでないから。
一通り確認すると、お店の人も納得したようで「違ったわ」といった感じで終わった。
私は小学生ながらも「いやな感じだな」とモヤモヤがしばらく消えなかった。
この話からなにかしらの教訓を得ようとするならば、「親の評判がよくないお店は気をつけたほうがいい」。もう一つは「いちど変な言いがかりをつけてきたお店には近寄るな」だ。
私もそれなりの年齢になってわかる。大人が「よくない」というお店は大抵「よくない」。大人はいろんな経験から、なにかを察することができるけど、子どもにはまだ経験が不足している。
子どものみんなは大人の話をよく聞きましょう。ここには子どもの読者はいないだろうけど。

