日常

また網棚に置いてきた

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子どもと一緒にどこかへ出かけるとなると、どうしても荷物が多くなる(子どもの暇つぶしやら、飲み物やら)。電車で出かけることが多いので、私は両手が自由になるリュックを背負うようにしている。

リュックに色々と詰め込むんだけど、まるで小旅行にでも行くかのような荷物になる(行く場所はただの商業施設)。だんだんと「なんでこんなにものを、持たないといけないんだ」といやになってくるし、子どもの暇つぶしが不要なものにしか見えなくなる。

電車に乗っているあいだは、景色でも眺めていればいい、こんなときこそ暇を堪能してくれ、と思うんだけど、子どもにそういうことを言うと「私の楽しみを奪われた」と言わんばかりにがっかりした顔をする。

そんな顔を見たら、私も強くは言えなくなる。道中機嫌が悪くなるのも困るし、ご機嫌どりをするのもいやだし。なので、ことりっぷを片手に、どこか遠くへ行くような雰囲気で商業施設へ向かう。

まあまあな荷物を詰め込んだリュックは、肩にどっしりと食い込む。華奢な体じゃないのに、肩はすぐに白旗をあげる。「電車に乗ってる間は、網棚にリュックを置いてくれ」と体からメッセージが送られてくる。まあそのほうが楽だしいいか、と網棚にリュックを置いて子どもの様子を見ながら外の景色を眺める。「もう少しで着くよ」と子どもを急かし、目的地についたら、そくざに電車から降りる。

電車から降りて、しばらく歩くと子どもは「水が飲みたい」と言う。やれやれと背中に手を伸ばす。でもそこにはなにもない。身軽になった私は一気に青ざめる。

リュック網棚に置いたままだ⋯⋯。

あぁ、もうなにもかもいやだ⋯⋯。なんて言ってはいられない。すぐに子どもの手を握り、駅の窓口に向かう。かなりのスピードで歩くので、子どもが軽く浮いている。泣きそうな顔で歩く私の隣で、ちょっと浮きながら歩いてる子どもは楽しそうにしている⋯⋯。

ということが何回かある。そしてたいがい路線の終点に行って、リュックと感動の再会をする。

リュックを持った私は「もう網棚には置かないぞ」と心に決めるけど、あっさり忘れてしまう。もしかすると、そういう宿命なのかもしれない。

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日常エッセイスト
1984年生まれ。エッセイスト。 小さなできごと(いいことも、わるいことも)を、ここに書き留めています。
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