日常

知らないおばさんの歌

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私が小学生のころ、テレビで『昔なつかしのメロディー』みたいなのがやってると、母はテレビから流れてくる歌に合わせて「懐かしいわね」と言いながら歌っていた。

私からすると、そこに映っている人は「知らないおばさん」だったり「知らないおじさん」だ。付け加えるとしたら「歌がうまい知らないおばさん」と「歌がうまい知らないおじさん」だ。

母はテレビに映っている歌手(歌がうまいおばさん)を見ながら、「歳をとったわね」としみじみに言っていた。今の姿しか知らない私からすると、本当に人気だったのか不思議で仕方がなかった。母に「本当に人気だったの?」なんて訊くと、「すごかったんだから、今の○○以上よ」と言う。そうなんだ……。

それから三十年ぐらい経った。

私はテレビから流れてくる懐かしいメロディーを気持ちよく口ずさむ。

「いやあ、懐かしいなあ」

子どもはテレビから流れてくる懐かしいメロディーにはいっさい興味がない。いや、興味とかいぜんの話かもしれない、耳にも入ってるかどうか怪しい。

「ママはこういうのが好きなの?」
「好きっていうか、昔この曲すごく流行ったんだよ」
「ふーん」

歌は耳に入っているけど、左耳から右耳へと歌は通り過ぎているようだ。

きっと子どもからすると、「小綺麗な知らないおばさん」と「小綺麗な知らないおじさん」が歌ってるように見えるんだろう。

昔の私と同じように。

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日常エッセイスト
1984年生まれ。エッセイスト。 小さなできごと(いいことも、わるいことも)を、ここに書き留めています。
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